萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年6月30日)

令和2年6月30日(火曜日)
教育、科学技術・学術、その他

キーワード

宇宙基本計画、大学入学共通テスト実施要項、北海道大学総長の解任、日本人学校と学びの保障、統合イノベーション戦略2020素案及びバイオ戦略2020、学生支援緊急給付金

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年6月30日(火曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年6月30日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年6月30日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 私からは三件ございます。まず、本日の持回り閣議で、新たな宇宙基本計画が決定をされました。本計画では、宇宙開発利用を通じて、引き続き、宇宙安全保障の確保に取り組むことに加え、災害対策や知の創造、経済成長などの多様な国益にも貢献していくことが新たに盛り込まれました。文部科学省としては、本計画を踏まえ、米国提案の「アルテミス計画」への参画機会を活用した深宇宙探査に必要な能力の獲得及び日本人宇宙飛行士の活躍機会の確保、H 3ロケット及び先進光学衛星の開発、並びに将来宇宙輸送システム及び挑戦的な先端技術を取り入れた衛星の研究開発、また、「はやぶさ2」等の宇宙科学・探査や人材育成などに特に力を入れて取り組んでまいります。「アルテミス計画」については、昨日の宇宙開発戦略本部会合において、総理から、将来を見据えた技術開発や日本人宇宙飛行士の月面での活動など、新たなフロンティアの開拓に主体的に、かつ果敢に挑戦していくという意思表明があるとともに、それに向けてしっかり準備を進めるようご指示がありました。関係機関と連携して着実に進めてまいりたいと思います。
 次に、令和3年度大学入試共通テストの実施方法等について、本日、大学入試センターにおいて「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項」を策定し、公表することとなりましたのでご報告申し上げます。大学入試センターが策定する「大学入学共通テスト実施要項」では、6月19日に文部科学省が定めた大学入学者選抜実施要項において「学業の遅れ」を理由に共通テストの第2日程を受験できるとされた対象者や、共通テストの第2日程を疾病等で受験できない者のために実施する特例追試験についての詳細などの内容が盛り込まれております。共通テストの第2日程については、過年度卒業生を含め第1日程を不測の事態で受験できなかった者のほか、「学業の遅れ」を理由にその日程を選択する者を対象としていますが、具体的には、高等学校等を本年度末に卒業見込みの者のうち、新型コロナウイルス感染症の影響で学業の遅れのため、第2日程で受験することが適当であると在学する学校長が認めた者としています。この大学入試センターの要項が発表されることを受け、文部科学省において、第2日程を選択する受験生が確実に当該日程で試験を受けることができるよう、試験会場の確保等のため、明日7月1日から共通テスト第2日程の受験意向の把握をするための調査を開始する予定です。文科省としては、不安を抱えながら大学進学を目指し、日々努力をされている受験生の皆さんが、安心して大学入試の準備ができるよう、大学入試センターとも連携してしっかり準備を進めてまいりたいと思っております。
 最後に、昨年7月に北海道大学総長選考会議から行われた国立大学法人法第17条4項に基づく名和豊春北海道大学総長の解任の申出を受け、省内で検討を行ってまいりましたが、本日6月30日付けで名和総長の解任処分を行いました。北海道大学総長選考会議からの申出を受けて以降、文部科学省では、申出に係る事実確認を行うとともに、行政手続法に基づく名和総長への聴聞の実施をいたしました。これらを踏まえて省内で検討した結果、総長選考会議の申出の内容は、国立大学法人法第17条第2項に規定する「その他役員たるに適しないと認めるとき」に該当すると判断をいたしました。私個人は、名和総長と直接面識はありませんが、今回、名和総長を選考した北海道大学総長選考会議における申出を重く受け止め、法令に定める手続にのっとって、省内で検討を行い慎重に判断したものです。国立大学法人の学長の解任は初めてのことであり、このような事態となったことは誠に遺憾であります。なお、詳細につきましては、この後、担当課から説明をさせていただきたいと思います。私からは以上です。

記者)
 一点、在外教育施設、いわゆる日本人学校についてお伺いします。日本の学校は、ほとんどが再開されましたが、海外の日本人学校ではまだ休校しているところや、先生が日本に帰ったままで再開の目途が立たないところもあると聞いています。日本人学校の子供の「学びの保障」も大事な課題だと考えますが、今後の第二波などに備えて国内ではGIGAスクール構想も進んでいる中、ICTも活用した在外日本人学校のオンライン授業や体制の充実について、大臣はどうお考えですか。

大臣)
 新型コロナウイルス感染症の流行前から休校中の2校を除く、日本人学校93校のうち、児童生徒全員の一時帰国に伴い、教師も日本に一時帰国し休校となっている学校がいまだ5校ございます。一方、全校又は一部の学年で登校が再開されている日本人学校は40校に上り、また、ロックダウン等により、現地で登校が禁止されている地域の日本人学校であっても、その全てにおいて、国内に待機している派遣予定の教師の参画も得て、オンラインによる指導が行われております。文部科学省としては、海外の日本人学校についても国内の学校と同様にICT環境を整備することが重要と考えており、令和2年度第二次補正予算において、児童生徒・教師1人1台端末の整備やICTを活用した教育体制構築のための経費を計上し、支援に努めているところであります。日本人学校は、在外、在留邦人社会の要であり、文科省としては、今後も日本人学校への支援をしっかりしていきたいと思っています。

記者)
 冒頭、宇宙の話もあったんですけど、今、政府全体で、バイオだとかAIの戦略、あと統合イノベーション戦略などを取りまとめられています。この夏か秋か分からないんですが、概算要求に向けてですね、文科省としてこれらの戦略を踏まえて何か基本方針があれば教えてください。

大臣)
 6月26日に開催された統合イノベーション戦略推進会議において、「統合イノベーション戦略2020素案」及び「バイオ戦略2020」が決定をされました。文科省としては、新型コロナウイルス感染症により、難局を乗り越えるため、我が国の科学技術・イノベーションを推進していくことが重要と考えており、感染症対策に係る研究開発の推進や研究現場への支援に全力で取り組むとともに、博士課程学生を含めた若手研究者の支援を強化してまいります。また、この度、戦略が策定されたバイオ分野を始め、「AI」、「量子」、「環境・エネルギー」、「マテリアル」等の重要分野については、関係府省と連携して取り組んでまいりたいと思います。今、気をつけようと思っていますのは、リーマンショックの後にですね、まさに不要不急の事業っていうのが見直しをされて、特に、例えばベンチャーへの支援ですとか、若手研究者の新たな研究がスタートしない状況というのを生んでしまったことがですね、結果として、日本の研究を何年も遅らせることになってしまった。もっと言えば、経済へ大きなマイナスを与える。本来だったら、産むはずだった様々な産業や製品というものが遅れることになってしまったと思っていますので、文科省としても政府としても、リーマンショックの轍を踏まないということを心がけて、今から予算編成、しっかり概算要求含めてお願いをしていきたいと思います。財務省側は、もしかすると、直ちに必要のないものはということを来年度の予算ではおっしゃるかもしれませんけれど、1回失敗しているわけですから、二度と同じ失敗しないようにですね、ここは、文科省が掲げてきた科学技術の様々な新しい分野については、チャレンジを続けさせていただく、その覚悟で交渉に臨んでいきたいと思っています。

記者)
 二点ほどお願いします。まず一点目は、北海道大学学長の解任の件なんですけども、総長選考会議からは、パワーハラスメント、職員へのパワーハラスメントがあったという申出があったと思うんですけども、これ、具体的にどういうパワーハラスメントがあったかというのは、大臣、教えていただけますでしょうか。

大臣)
 今日、こういう処分の決定をしました。で、申出のあった中身。細かいことについては、後ほど、担当課のほうから、この記者会見ではなくてですね、ご説明したいと思います。私も初めての大きな決断で、名和総長、大学改革にも熱心だったというふうに私も一定の評価をしております。ただ、選考会の皆さんから、こういう厳しい声が、一部ではなくて全体的にこういう意見が上がってきたということは、やっぱり現場としてそういう問題があったんだろうという判断をせざるをえない結論に達した次第でございまして。ご本人は、いろんな思いもきっとあるのだと思いますけど、その辺は、我々としては手続きを踏んで今日の決定に至ったと思っていますので、少し細かいことは、後ほどまた、所管の方から聞いてください。

記者)
 もう一点、あの、今年度の大学入試の件ですけども、国立大学協会がですね、入試の、文科省から配慮を求められた入試出題範囲について、今のところ素案ではありますけども、配慮しない方向で検討しているということが分かりました。文科省として、求めていたことに対してなかなか了解してもらえない件について、見解をお願いいたします。

大臣)
 今朝、御社の朝刊を見て、私も、ああそうなんだと思ってですね、所管のほうに確認をさせましたけれども、報道にあるような方針の素案を作成している事実はないという報告を受けさせてもらいました。出題範囲等への配慮、高校3年生で履修することの多い科目については、選択問題の設定ですとか、発展的な学習内容から出題しないなどの工夫を各大学に要請している事実は、変わりはございません。また、私もこの記者会見においてもですね、大学関係者の皆様に対し、入試運営に係る業務の負担増が増えることになると思いますけれども、今年に限っては、例年と異なる特別な対応が必要だと、必要な措置を最大限講じていただきたいということを申し上げてきたつもりでございますので、その趣旨は、協会の皆さんもご理解いただいていると思います。ただ、協会として何か方針を一方的に、全部で決めるということはあまりないと思いますので、最後は各大学の判断を尊重するという意味なのだと思いますので、どうぞ引き続き取材してみてください。

記者)
 困窮大学生向けの緊急給付金について伺います。19日に一次申請の締切りがあったかと思います。これの申込状況と、一部の学生からなんですが、対象から外されたという声が上がっています。対象外になった件数についての把握について教えてください。

大臣)
 「学びの継続のための学生支援緊急給付金」は、スピード重視の観点から、一番身近に学生に接している大学等において、学生の実状に沿って総合的に判断し、選考した上で、日本学生支援機構に推薦していただく仕組をとっております。本給付金の推薦は、あらかじめ2回に分けて行うことを公表しておりまして、一次推薦では、これまでの貸与型奨学金の実績などを元に、想定する対象人数の約7割にあたる約30万人分を各大学等に配分をさせていただきました、目安として。その結果、一次締切の6月19日までに約24万件の推薦をいただいており、現時点で、すでに21万人以上への支給を決定しております。他方、現時点では、それぞれの配分額の範囲内では、支援が必要な学生の全てを推薦できなかった大学等もあると承知しておりますので、一次推薦では推薦できなかったものの、各大学等において、支援が必要と判断している学生の数を調査した上で、今週中にも募集を開始する二次推薦において、大学等の実情を踏まえた配分額を提示する予定です。引き続き、迅速かつ確実に支援が行き渡るように努めるとともに、要件に合致する学生が支援を受けられないといった事態が生じないように、その支援に万全を期してまいりたいと思っております。

記者)
 現状、把握されているボリュームでは、二次推薦を希望する学生は総枠をはみ出さない。つまり、必要とする学生全員に給付金が行き渡るという状況なんでしょうか。

大臣)
 先ほども申し上げましたとおり、一次推薦で推薦できなかったものの、各大学等において支援が必要と判断している学生の数を調査した上で、今週中にも募集を開始する二次推薦において、大学等の実状を踏まえた配分額を決定したいと思います。現在、数値を精査しているところでありまして、今後の二次推薦における新たな申請を予想されるため、確定的なことは申し上げられませんけれども、しかし、本給付金については、約43万人を支援するために必要な予算を確保させていただいておりますので、要件に合致する学生が支援を受けられないといった事態が生じないように、その支援に万全を期してまいりたいと思います。一次推薦であらかじめ目安を示しましたけれども、学校によっては、逆に、それはもう大丈夫ですと、アルバイトも始まったので学生たちも元気にやっていますというところもあればですね、こちらがイメージしていた以上に困っているという学校もあるので、その辺のバランスをとりながら、何とか枠の中に収まるように、できるだけあぶれちゃったという人がいないようにですね、しっかりやっていきたいなと思ってます。

記者)
 名和学長についてお尋ねいたします。細かいことはこの後のレクということですが、名和学長と選考会議の言い分というのが、今回、食い違っている中で、1年間かけて審査をされてきたと思います。そういった中で、名和学長の言い分ではなく選考会議側の言い分を認めた理由についてお伺いしたいのと、あともう一点、今回、名和学長への処分に対して、北大の学内から反発する声も上がっていることもあるのは確かだと思います。今回の件を受けて、国立大のガバナンスとして、もしくは研究者たちとの意思疎通として、問題点もしくは今後、改善すべき点があれば教えていただけますか。

大臣)
 今回の解任は、名和総長を選考した北海道大学総長選考会議における申出を受け、法令に定める手続きにのっとって、省内で検討を行い慎重に判断したものです。一部のメディアにおける報道については承知していますが、本件に関する名和総長の陳述内容について、私からお答えすることは控えさせていただきたいと思います。いずれにしましても、選考会議を、設置をして、その会議のメンバーの皆さんが、それぞれの責任と立場において出された結果、それから名和総長の聴聞を通じて思いというものも両方聞かせていただいた上でですね、総合的な判断をせざるをえなかった。逆に言えば、国立大学が1年以上総長不在。卒業式に総長が出れない。こういう事態をいつまでも続けるということは、多分ですね、突き詰めていくと、名和さんにももう少し言い分があったり、あるいは、今、お話があったように、学内ではですね、総長を支持する方もきっと中にはいらっしゃると思うし、いて当たり前だと思うのですけれど、少なくとも、その選考会という公に自らも関わりをもって、きちんと設置をされた、法的根拠のある会議の中で、言うならば皆さんが替わるべきだという意見が出てきてしまったことがやっぱり重たいことなのじゃないかなと私は思いますので、そこは、私も初めてのことなので、すごく思いもありましたけれども、これ以上ですね、不正常な状態を北大が続けるということのほうが、現役学生たちに与える影響というものは大きいと、こういう判断をさせていただきました。

(了)

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